【リポート】日韓国交正常化60周年記念事業 特別講演会「隣の国の人々と出会う~私と韓国」

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「日韓国交正常化60周年記念事業」として、9月7日、斎藤真理子さん(韓国語翻訳者)を講師に迎え、特別講演会「隣の国の人々と出会う~私と韓国」を開催しました。当日は会場とオンラインのハイブリッド形式で実施し、計230名の方にご参加いただきました。

講師の斎藤真理子さんは、韓国文学の翻訳を手がけるほか、著作を通じて韓国社会や文化的背景も広く紹介されており、本講演会には幅広い年代の方々から関心が寄せられました。

講演では、文学を通じた韓国理解を軸に、ご自身の「隣の国の人々との出会い」から、韓国文学を支える近現代史の背景に至るまで、時にユーモアを交えながら語っていただきました。また、今回の講演にあわせてご準備いただいた韓国文学のブックガイドをもとに、「情」と「理」という2つの観点から、代表的な文学作品を紹介していただきました。

後半は質疑応答の時間が設けられ、オンライン参加者を含め、多くの質問が寄せられました。「古典を含め、韓国文学を映画化した作品でお勧めのものは」との質問には、逆に斎藤さんから会場に向けての問いかけもあり、参加者との意見交換に発展する場面も見られました。そのほか、「韓国の本を読んでみようと思うがどんな本を選ぶとよいか」、「翻訳者を目指す人へのアドバイス」など、熱心な質問が続き、関心の高さがうかがえました。

参加者から寄せられた感想の一部をご紹介します。

・ 講演はとてもわかりやすく、文学の持つ力を改めて実感する機会となりました。海外の本を読むことは、その国の知恵や人々に出会い、一緒の船に乗って旅をするようなものだというお話が印象に残っています。「一人一艘の船を持つ」とおっしゃった言葉も心に響きました。

・小説はすぐに理解できなくても、読み続けることで、遠くにある灯りのように私たちを照らしてくれる存在であり、読んだ一人一人の中に残るものだと教えていただきました。これからも船に乗って旅をするように本を読み続けていきます。斎藤さんもまた、遠くから灯りを照らしてしてくださる存在なのだと気づきました。

・韓国文学への興味が広がり、とても有意義な講演会に参加させていただきました。これまで多くの韓国の文学作品が紹介されてきましたが、読んでみたい作品は増えていくものの、時代背景や思想が難しそうで、なかなか手に取ることができずにいました。今回の講演でのお話を通じて、その難しさが少し解きほぐれたように思います。

・困難な時代をエネルギッシュに生き抜いてきた韓国の小説の登場人物のように、私もくじけず、絶望せずに生きていこうと思いました。今回ご紹介いただいた小説を読んでみます。

・文学作品が照らす光は、話題になった映画とは異なるかたちで、ある側面を照写し続けるというお話が印象深かったです。ハン・ガンさんの8歳の時の体験にも驚かされましたが、斎藤さんの語られる比喩表現もとてもわかりやすく、かつ文学的であり、文学作品に長く触れてこられたからこそ磨かれた深みを感じました。

講演終了後、会場では懇親会を開催しました。斎藤さんに直接感想を伝えようとする方々の列ができたほか、同じ関心を持つ参加者同士が、それぞれの活動や思いを語り合う様子も見られました。

日韓文化交流基金では、今後も日韓交流に関する講演会を開催するとともに、参加者同士が交流できる場づくりにも取り組んでまいります。

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